所得税等の確定申告では、担税力に応じた税額算定のため各種所得控除が設けられており、
その中には「生計を一にする親族」を要件とするものがあります。
また、相続税における小規模宅地等の特例でも、「被相続人と生計を一にする親族」が居住していた
宅地等が対象となります。
このため、所得税・相続税いずれにおいても「生計を一にする親族」の判定は税額に大きく影響します。
本稿では、その判定基準を所得税と相続税ごとにみていきます。
1,所得税等における判定基準
所得税法に基づく各種所得控除のうち、「生計を一にする親族」を適用要件とするものには、
【雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、障害者控除、ひとり親控除、配偶者控除、配偶者特別控除、
扶養控除、特定親族特別控除】があります。
なお、税法上の「親族」とは、「六親等以内の血族」「配偶者」「三親等内の姻族」を指します。
所得税法では、「生計を一にする親族」について、次のように定めています。
・親族が同一の家屋で生活している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる
場合を除き、「生計を一にする親族」として取り扱われます。
・勤務、修学、療養等の理由により日常的に起居を共にしていない親族であっても、
①勤務や修学等の余暇には他の親族と起居を共にすることが常例となっている場合、
または②親族間において、生活費や学資金、療養費等の送金が継続的に行われている場合には、
「生計を一にする親族」として扱われます。
このように、「生計を一にする親族」は必ずしも同居を要件とするものではなく、
別居していても生活費等を送金し、実質的に「同じ財布」で生活していると認められれば該当します。
別居親族の生活費や療養費を負担し、年末調整において扶養控除の対象とする場合には、銀行振込や
現金書留の控えなどを保管し、必要に応じて源泉徴収義務者に提示できるよう備えておくことが重要です。
2.相続税・小規模宅地等の特例の適用における判定基準
個人が相続または遺贈により取得した財産のうち、相続開始直前において、被相続人または被相続人と
生計を一にしていた親族の事業用または居住用に供されていた宅地等で、一定の要件を満たすものに
ついては、相続税の課税価格の計算上、その価額を一定割合減額することが認められています。
被相続人と生計を一にしていた相続人が適用できる小規模宅地等の特例の要件があります。
小規模宅地等の特例における「生計を一にする親族」の判定基準は、原則として所得税法上の基準と
同一とされていますが、
二世帯住宅に居住する親子の相続について、その該当性が争われた裁決事例があります。
当該事例では、1階に子、2階に被相続人がそれぞれ居住していましたが、
①建物の構造上、各階が独立した居宅となっていること(区分登記がされていること)、
②水道光熱費や生活費がそれぞれ独立して負担されていたことなどから、相続人である子については、
小規模宅地等の特例にいう「被相続人の居住の用に供されていた宅地に同居する親族」にも、
「生計を一にする親族」にも該当しないと判断されました。
この事例は、同一建物に居住している親族であっても、実質的に「同じ財布」で生活している事実が
なければ、「生計を一にする親族」とは認められないことを示したものといえます。
〇まとめ
所得税・相続税における「生計を一にする親族」の判定は、同居・別居の形式だけでなく、生活費や
学資金の負担など実態を重視して判断されます。
所得税では各種控除の適用に、相続税では小規模宅地等の特例の適用に直接影響するため、正しい理解が重要です。
特に二世帯住宅などで同居していても、生活が独立している場合は特例が適用されないこともありますので、
事前に生活状況を整理することが大切です。
ご不明点がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
